ご夫婦とお子様4人の6人家族の住宅です。
最初に建主様と敷地に入り、一角にあった小屋の椅子に腰掛け、敷地を歩きいろんな話をしました。
三方を隣家に囲まれ道路側もお向かいが良く見えました。ところが一方向は緩い下り斜面で視線が抜けその先に綺麗な山が見えました。一番眺めがいいのはこの向きだとお互いに思いました。丁度山に向いた小屋の椅子に座って話を続けました。夕方になり暗くなってくると山の上に月が出ました。この眺めが見られる居間を作りましょう、そんな話がどちらからともなく出てきました。そうして住宅の設計が始まりました。
庭に面した1階の居間は山に向かって斜めに伸びた配置をしています。ですが2階建ての建物全体は周辺の街並みに合わせて、敷地境界線に平行に配置しました。街に後から入る建主様の配慮です。
建主様は和を好まれました。和の感覚は伝統的日本家屋に由来します。ここでは現代の日本家屋を模索しました。太い柱梁で構成され建具の開閉で空間を使い分けた日本家屋を、現在の日本の普及された技術に置き換えると、鉄骨造が近いと考えました。6人家族の将来の変化にも対応できるよう柱は外周のみの6本とし、壁を全く無くしても構造上成立します。法的に許されたので外壁・内床は杉無垢板、内壁天井・建具はシナ合板で仕上げています。
2階は子供リビングと最小限の個室です。将来は大きな個室にも二世帯にも改修可能です。梯子を使って天窓から屋根に登れます。
(松下建築設計 一級建築士事務所 松下一樹)
夜の眺めを意識して作られたこの家で、日の光も明るい時間に感じるのは、ただ途方もない安らかさだ。杉無垢の木目、秘密基地のように天井から下がる紐、腰までの高さの本棚。施主と建築家の視線は、常に4人の子ども達の上にあったのだろう。
この家に住まう人、この家で育つ人、この家を訪れる人。誰にとっても居心地の良い家の、大きく開けられたリビングには、昼には昼の、夜には夜の、優しい光が降り注ぐ。


構 造 : 鉄骨造 地上2階
建築面積 : 98.09㎡
延床面積 : 167.91㎡
竣 工 : 2008年6月
所 在 地 : 滋賀県 大津市
設計 松下建築設計 一級建築士事務所
施工 ㈱かわな工業
松下建築設計 一級建築士事務所 http://www.matsushita-arch.com/
松下 一樹/Kazuki Matsushita
1992 関西大学工学部建築学科卒業
1992-2000 (株)日建ハウジングシステム
2001-2003 三井物産ハウステクノ(株)
2003-2006 フリーランス
2006- 松下建築設計 一級建築士事務所